企画記事

【ヒトコワ】暗い病院の駐車場で遺骨と共に過ごす1時間 [AWAKE]望月大智

連日、テレビなどで「怖い話」や「心霊」特集など放送されていますが、実のところ本当に怖いのは「人」だったりします。そこでホストさんたちが実際に体験した人での怖い話をお届けしていきます

望月大智●AWAKE

ホストをやり始めの時の話なので、もう18年ぐらい前になります。当時は千葉だったんですけど、単価が今とは全くことなっていて、その時は100万売上を上げていれば売れっ子ホストでした。

その方は55歳の女性だったんですけど、親がお金を持っていたのかわからないですけど、毎日のように来てくれて400万ぐらい使ってくれていたんですね。出会ってから最後まで「抱いて」しか言ってこないような人で、ある時は150万出してきて、「これでわたしを抱いて」なんて言うほど(笑)。結局、最後まで抱きはしないんですけどね。

ある日VIPでいつものように接客していたら、その人の電話が鳴りました。すると会話中に泣き始めたのです。それで「今日はちょっと辛いから」と帰ってしまいました。いつもは喜怒哀楽が激しい人なのにどうしたんだろう…とは思いましたが、特に気にすることなくその日を終えました。数日後にその方がまた来てくれたのですが、どうやら、この前の電話はお父さんが亡くなった連絡だったようでした。そして何を思ったのか、俺に「お父さんに会ってほしい」と言うのです。“なんでホストと客の関係性しかないのに、亡くなったお父さんに会わなくてはいけないんだ?“と口には出さなかったですけど本気で思いましたが、「他店の◯◯は会ってくれた」とか言うわけですよ。まぁ、お金も結構使ってくれていたし、しぶしぶ承諾しました。

 

その日の営業後に、お父さんが安置されている斎場へ向かいました。入口に着くと、いきなり塩をぶん投げてきて「悪いのが憑かないように」と。20歳そこそこで常識も何も知らなかったので、ただイライラして”既にお前が俺に取り憑いてんだろ“と思いましたが、我慢して、そのまま部屋までついていったんです。その部屋は何百人も入れる広さで、周りには花が飾ってあり、亡くなったお父さんの凄さがわかるようでした。

その部屋の真ん中には棺が置かれていまして、その人が駆け寄り、お父さんの顔にスリスリして「お父さん、大智が来てくれたよ」なんて言うんですよ。“いや、俺会ったことないし“と思いながらも、とりあえず手を合わせて、そのわずかな時間ですが体感的に「何も悪いことをしていないので呪わないでください」と1000回ほど頭の中で繰り返しました(笑)。その後、隣の控室みたいな場所に連れて行かれて、そこに6個ほど弁当が置かれていたのですが「全部食べて」と。毎日3キロぐらいのお弁当を作ってきてくれていて、他店舗のホストにも同じことをしていたのですが、俺以外は全員なんだかんだ理由をつけて手を付けていなかったみたいなんですね。ホストとして1つでも勝つには他がしないことをしないと!と思っていた俺は毎日全部食べていただけに、断るわけにはいかず、遺体と会った直後に弁当を6つ食べるという謎の現象が起きました(笑)。

数日後、葬儀も火葬も終わったと電話があり、その時に「病院にお父さんの私物を取りに行かないといけないから車を出して」と頼まれました。心底嫌でしたけど、売上には代えられないと渋々ですが車を出してあげることに。

夜9時。待ち合わせは病院で、駐車場で1人ポツンと待っていると、前から1台の車が来ました。よく見ると霊柩車で、停まると助手席からあの人が。手には遺骨を持っており、そのまま俺の方に来ました。そして、

「この遺骨を持ってて。いま荷物を取ってくるから」

いやいや、それは普通に嫌でしょ。必死に断っているのにも関わらず、ボンネットにボンと遺骨を置いて病院の方に行ってしまったのです。薄暗いだだっ広い駐車場に遺骨と俺。どんなシチュエーションだよと思いながら、1時間ほど遺骨と共に車の前で待ちました。本当に怖かったですよ。ようやく戻ってきたので、車に乗せて家まで送ったんですけど、着くなり「帰りたくない」と駄々をこね始めました。俺ももう我慢の限界だったので「もう車はいらないから歩いて帰る」と言って、歩き始めたら彼女が車から出たので、急いで飛び乗って車で帰りました(笑)。

その後も何度かお店に遊びに来てくれたのですが、噂では俺の気を引こうと他店で売掛200万飛んで、反社を使って踏み倒そうしたりしたみたいですが、結局は遺産も使い果たしたようで来なくなりましたが、もう二度とあんな体験はしたくないですね。

ショップデータ

店名AWAKE
TEL03-6273-9637
住所東京都新宿区歌舞伎町1丁目2-7 星座館ビル 地下1階
ウェブサイトhttps://www.smappa.net/